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【報告書】「LIEMを背景に持つクライエントへの心理支援の現状と課題について」報告書

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*LIEM:Low-Income and Economic Marginalization(低所得と経済的疎外) 今年度と来年度(2023~2024年度),科研費の助成を受けて「 貧困下にある子どもに有効な支援を提供する心理支援者育成プログラムの開発 」という研究課題に取り組んでいます。 この研究課題は東京都立大学の阿部彩先生が研究代表を務める学術変革領域研究(A)「 貧困学の確立:分断を超えて 」の 公募研究 (貧困の子どもへの影響を緩和する社会システムの実装に関する研究)として採択されたものです。 「2019年国民生活調査の概況」(政策統括官付参事官付世帯統計室,2020)によると2018年の日本の相対的貧困率は15.7%であり,国民の6人に1名程度(約2,000万人)が貧困ライン以下での生活を余儀なくされている状況にありながら,これまで日本の臨床心理学の領域では貧困の状況にある人々への心理支援のあり方についての議論はほとんどと言ってよいほど行われてきませんでした。 貧困は社会的排除に関する問題です。発達障害の可能性がある子どもの割合が6~7%とされており,この割合をそのまま日本の人口に換算すると800~900万人ほどになりますが,発達障害の人たちへの支援に関しては多くの研究や実践が重ねられてきたことを考えると,貧困は臨床心理学という学問においても排除され,「ない」ことにされてきたと言えるでしょう。 海外では例えばアメリカ心理学会が『 The APA Guidelines for Psychological Practice for People with Low-Income and Economic Marginalization 』というガイドラインを公表しているように,多文化・社会正義カウンセリングの文脈を中心に貧困を背景に持つクライエントへの心理支援についての議論が重ねられています。 日本でも貧困が人の育ちや暮らし,メンタルヘルス等に与える影響を理解し,必要な支援を提供するための議論が必要です。 そこで本研究ではまず今年度,公認心理師や臨床心理士がどれくらい,どこで貧困を背景に持つクライエントへの心理支援を経験しているのか,そしてその中でどのような困難を感じているのか,どのような能力(コンピテンシー)が必要だと考えているのかなど,貧困を背景に持つクライ...

【論文】公認心理師・臨床心理士養成課程における社会正義を実現するためのコンピテンシー養成を目指した授業実践

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「公認心理師・臨床心理士養成課程における社会正義を実現するためのコンピテンシー養成を目指した授業実践」という論文が北海道大学大学院教育学研究院臨床心理発達相談室紀要に掲載されました。 この論文は,社会的排除を経験しているクライエントへの心理支援に関する,心理支援者のコンピテンシーを養成することを目指した大学院における授業実践についてまとめたものです。 近いうちに北大学術成果コレクション( HUSCAP )上で本文をお読みいただけるようになる予定ですので,公開され次第,情報を掲載します。 【要旨】 従来、心理支援は個人の内面に焦点化する傾向が強く、社会的文脈を考慮し、さらにはそれ に対して働きかけていこうとする意識や取り組みが欠けていた。海外では社会的文脈を考慮し、 社会正義を実現するための心理支援者のコンピテンシーが重視されるようになっている中で日本でもそうした取り組みが求められるようになっている。こうした中で本稿では、心理支援者の養成課程において社会正義を実現するためのコンピテンシーに関わる教育・訓練がどのように行われ得るのかについての議論を整理するとともに、公認心理師・臨床心理士の養成課程における授業実践を基にしてその効果や課題を検討した。その結果、授業実践を通して、よりマクロな視点の取り組みの必要性は高まる一方で、そうした取り組みを実行することができるというコンピテンシーは十分に高まらないことが示唆され、検討の余地が残された。

【学生院生の取り組み】地方学の実践支援プログラム2023の成果報告会

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 北大では「自治体との共創」や「課題解決のための社会との連携強化」をかかげ,北大の総合力による新しい地域連携の形を推進することを目的に「 地方学(ぢかたがく)の実践支援プログラム 」という取り組みが行われています。 学生院生が地域社会や団体と連携しながら,現場地域(フィールド)において課題解決に主体的に取り組むことを支援するプログラムです。 今年度,福祉臨床心理学ゼミ修士課程1年の佐々木あまねさんが「道内地方小規模高校における生徒支援についての研究」というテーマでこのプログラムの助成を受けて,苫前町と連携共同し実践研究を進めてきました。佐々木さんは,入学者が減少し,存廃の危機にさらされている地方公立高校にあえて札幌都市圏から進学する生徒たちがいることに注目し,時には中学時代に不登校のような学校適応上の困難さを経験した生徒たちが,地方高校で過ごす中で自分らしさを見つけながら成長していく過程を生徒個人のレベルだけではなく,学校や地域コミュニティが持つ力にも注目して理解しようとする研究に取り組んでいます。 修士課程1年生ということで,研究成果がまとまるのは来年のことになりますが,先日行われた報告会では,今年度,プログラムの助成を受けて進めた調査の成果を報告しました。 個人的には佐々木さんの研究を見ながら『 銀の匙 silver spoon 』という漫画が思い浮かびます。

研究室の新しいwebサイト

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諸事情により,研究室のwebサイトを引っ越ししました。 新しいサイトは こちら です。 引き続き,よろしくお願いします。